自然の生命と日本人 ~国土と宗教・信仰…民俗学の視点から~

日本の自然・国土と宗教観・信仰について、延喜式、風土記等編纂資料のほか、地域の民俗学資料、各種民俗学文献から考察します。フィールドワークの記録も。

塵輪 ―火山のイマジネーション―

石見神楽の演目に、「塵輪」というものがある。

 

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 (写真は、浜田市観光協会のサイトより)

 

これは仲哀天皇の御世に塵輪という鬼が現れ悪事をつくし、それを成敗する物語だ。

 塵輪は、黒い雲に乗って空中を浮遊し、人々を虐殺されたとされている。

 

 縁起とされる『八幡宮縁起』には以下の様な記載がある。

「天皇みづから五万余人の官軍を相したがえ、長門ノ国豊浦ノ宮にして異国の凶賊を禦がしめ玉う。この時異国より塵輪というふしぎのもの、色はあかく、頭八ありてかたち鬼神のごとくなるが、黒雲に乗て日本に来り、人民をとりころすこと数を知らず」 

 

 赤い皮膚、8つの頭、黒い雲・・・どこか、火山噴火を思わせる伝説だ。赤い皮膚は溶岩、8つの頭は溶岩のながれ、黒い雲はそのまま火山煙のように思える。長門国(山口県)には、火山群がある。

 

噴火した火山の恐ろしさを古代の人々が鬼の行状と感じ、このような伝説がつくられたと想像すると、かつての日本の自然の力とロマンを感じる。

 

by 自然の生命と日本人 author:スイチョク